社会医療法人 ペガサス 馬場記念病院

診療科・部署紹介

脳血管内治療部

血管内治療とは


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頭や頸部を切開することなく、足の付け根や腕の動脈からカテーテルという細長い柔らかい管を挿入し、これを病変近くまで誘導して治療を行います。

脳の血管にできた動脈瘤や血管の奇形を、血管の中から埋めたり、脳や頸動脈の血管が細くなっている部分を拡げたり、つまった血栓を取り除いたりする治療で、『カテーテル治療』とも呼ばれております。

馬場記念病院血管内治療部は、伝統ある馬場記念病院脳神経外科(金本幸秀部長)の一部門として機能しております。血管内治療は、高齢者や全身合併症をお持ちの方にも身体的負担が少なく施行できる点で優れております。また、治療後の安静と入院期間が短いという利点もあります。ただ、疾患によっては開頭術のほうが安全・確実に治療を行える場合もあります。単に"頭を切るか(脳外科)"、"切らないか(血管内)"という視点ではなく、この患者さまにとって"開頭がむいているのか"、"血管内治療がいいか"を脳外科内で十分な検討を行ったうえで、"患者さまに最も適切な治療"を提供致します。

当院は日本脳神経血管内治療学会研修施設に認定されております
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24時間、365日、脳神経外科専門医でもある脳血管内治療専門医による対応が可能です。


治療対象疾患(写真は当院での実際の症例)

脳動脈瘤(破裂・未破裂)に対するコイル塞栓術
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<コイル塞栓術前>       <コイル塞栓術後>


脳動静脈奇形に対する塞栓術
脳動静脈瘻に対する塞栓術
頸動脈狭窄症に対するステント留置術
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<ステント留置前>       <ステント留置後>


頭蓋内外の血管狭窄に対する結構再建術(ステント留置や風船治療、動脈内注入療法)
脳腫瘍に対する腫瘍血管塞栓術
急性期脳梗塞に対する血栓回収治療
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<血栓回収前>       <血栓回収後>     <実際の血栓> 


血管内治療件数


2020年4月~2021年3月末 全128例

脳動脈瘤塞栓術 44例
ステント留置術 34例
脳血管閉塞に対する血栓回収療法 35例
その他 15例

脳動脈瘤の新たな血管内治療"フローダイバーターステント"について


脳動脈瘤とは脳の動脈が"こぶ状"に膨らんだ状態で、破裂することにより、くも膜下出血を引き起こします。くも膜下出血は非常に激しい頭痛や意識障害で発症しますが、約1/3の方が死亡、1/3が寝たきり、1/3が社会復帰されるといわれています。 脳動脈瘤には破裂してくも膜下出血になった破裂脳動脈瘤と、たまたまみつかった未破裂脳動脈瘤があり、その治療方法や使用できる医療機器に若干の違いがあります。

脳動脈瘤の治療には開頭クリッピング術と脳血管内手術があり、開頭クリッピング術は破裂および未破裂とも同じ手技で行います。一方、脳血管内手術では破裂の場合はステントと呼ばれる金属製の筒を使用できないなどの制約があります。

フローダイバーターステント(図.1)は、破裂していない未破裂脳動脈瘤に対して用いる非常に編み目を細かくしたステントのことで脳動脈瘤内に入る血流を抑えることで、動脈瘤内の血栓化を促進して動脈瘤の治癒を目指す方法です。
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日本国内では2015年から使用が認められ、当初は開頭クリッピング術で治療の難易度が高く、治療困難であったり、今までの脳血管内手術では十分な治療効果を得ることができずに再発を繰り返す10mm以上の内頚動脈瘤に対して使用されていました。

2020年9月からは5mm以上で4mm以上の広径なネックを持つ動脈瘤で、部位としては今までの内頚動脈に加え、椎骨脳底動脈、中大脳動脈や前大脳動脈の近位部に適応拡大されました。実際の治療前後の写真を図.2に示しています。
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フローダイバーター治療に続く、”新たな脳動脈瘤治療用デバイス(Woven EndoBridgeデバイス、略称 W-EB)”の当院への導入についてお知らせいたします。



2023年9月より当院でW-EBの使用が可能になりました。
以下、W-EBについてご説明いたします。
W-EBは2019年から本邦で使用されている脳動脈瘤に対する血管内治療機器です。
欧州ではすでに2010年から使用されており、全世界で1万件以上の使用実績があり、安全性についても実証されています。W-EBですが、細かい網目の袋状になった形状をしており、ニッケルチタン製の形状合金で作られています(図1)。 適応はワイドネック(基部が幅広い)の分岐部脳動脈瘤(図2)で、脳動脈瘤治療の約3割程度が相当します。従来の方法だと治療が難しい場合や治療成績が悪い、根治が難しい症例に対して行われています。

W-EBを用いることで、手技が比較的容易となり、従来の治療方法より手術時間は短くなり、放射線被曝量も少なくなります。さらに、いままではこのような脳動脈瘤ではステントを使用することが多く、抗血小板剤(血液さらさら)を長期間内服しないといけませんでしたが、それも短期間で済ますことができます。 治療方法ですが、他の脳動脈瘤治療と同様に全身麻酔が必要です。大腿部の動脈からカテーテルを入れ、それを脳動脈瘤まで誘導します。折りたたまれたW-EBをカテーテルから押し出すことで展開し、脳動脈瘤に血流が入らないようにすることで破裂を防ぐことができます。W-EBにつきましては、すべての脳動脈瘤患者様で行えるのでなく、脳動脈瘤サイズや部位などで使用できないこともあります。

治療をご希望の方は、馬場記念病院 脳神経外科外来医師までご相談いただけましたら幸いです。

図.1
図1
図.2 図2
図はTERMO HPより引用しています。

W-EBサイズ表



W-EB治療前

W-EB治療後 3ヶ月後に完全閉塞


医師紹介

脳卒中担当部長
須山 嘉雄

卒業大学・学位
大阪医科大学
医学博士
所属学会・資格
日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳神経血管内治療学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医・指導医
日本脳卒中の外科学会 技術指導医
日本医師会認定 産業医
日本脳神経外科コングレス
日本脳神経外科救急学会
役職
藤田医科大学脳卒中科 客員教授

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